オーケストラの演奏を観ているときに、「あれ?あのトランペットの持ち方、何か変じゃない?」と感じたことはありませんか?
普通、トランペットは地面に対して垂直に構えるのが一般的ですが、時々、演奏者がトランペットを水平に構えているのを目にすることがあります。
この現象の理由、ご存じですか?
実は、このトランペットは「ロータリートランペット」と呼ばれるもので、一般的なトランペットとは異なる楽器なのです。
吹奏楽ではあまり見かけないため、トランペット経験者でもこの楽器を知らない方がいるかもしれません。
ロータリートランペットとは?
ロータリートランペットは、その名前からもわかるように、トランペットの一種です。
「ロータリー」とは、音の高さを変える仕組みを指します。
一般的なトランペット、ここでは「ピストントランペット」と呼ぶことにしますが、このトランペットでは「ピストンバルブ」という機構を使って音の高さを調整します。
一方、ロータリートランペットでは「ロータリーバルブ」という仕組みを使用します。
この仕組みはホルン(フレンチホルン)でも採用されており、同じ原理が使われています。
なぜ横向きに構えるのか?
ロータリートランペットは、オーストリアのウィーンでピストントランペットが誕生した直後に開発された楽器です。
ドイツやオーストリアのオーケストラでは、現在でもロータリートランペットが主流であり、「ドイツ管」とも呼ばれています。
この楽器は、ロータリーバルブの構造上、レバーを操作しやすくするために横向きに構えるようにデザインされています。
普通のトランペットと何が違うの?
では、ロータリートランペットとピストントランペットの違いはどこにあるのでしょうか?
見た目や構え方以外に、どんな違いがあるのか、いくつかのポイントに分けて見ていきましょう。
運指
運指に関しては、ロータリートランペットもピストントランペットも基本的に同じです。
突然ロータリートランペットを演奏することになっても、特に心配する必要はありません。
ただし、ロータリートランペットには「キー」という補助的な機能が備わっている場合があります。
これは木管楽器と同様の仕組みで、音を補助的に変えるためのものです。
使いこなせれば便利ですが、使わなくても特に問題はありません。
マウスピース
基本的には、ピストントランペットと同じマウスピースが使用できます。
「ロータリートランペット用」とされているマウスピースもありますが、これはカップの深さがロータリートランペットに適したサイズになっているだけで、ピストントランペット用のマウスピースも装着可能です。
調性
楽器の調性とは、その楽器で「ド」を吹いた時に実際にどんな音が出るかを指します。
ピストントランペットで最も一般的なのは、ピアノの「シ♭」の音が出る「B♭管」です。
「B♭管」の他にも、「C管」「E管」など、様々な調性のトランペットがあります。
ロータリートランペットも「B♭管」「C管」などが製造されており、調性が同じであれば、ピストントランペットと同様に演奏できます。
音色
「フリューゲルホルン」という楽器をご存じでしょうか?
これはピストントランペットに比べて非常に柔らかい音色を持つ楽器です。
では、ロータリートランペットの音色はどうでしょうか?
ピストントランペットと比べて明確に異なる音色の特徴はありませんが、微妙な違いはあります。
音色の感じ方は個人差があるため、聞く人によって印象が異なることもあります。
価格
ロータリートランペットは、ピストントランペットに比べて価格が高いことが多いです。
初心者には手が届きにくい価格帯のものもあり、個人で購入するにはハードルが高いかもしれません。
使用される場面
ロータリートランペットはオーストリアのウィーンで生まれた楽器で、特にオーストリアやドイツの作曲家による楽曲の演奏でよく使われます。
例えば、モーツァルトやベートーヴェン、ワーグナーといった作曲家の楽曲がその対象です。
これらの作曲家の作品には、ロータリートランペットが持つ独特の音色がよく合うため、ドイツやオーストリアのオーケストラではロータリートランペットが主流となっています。
まとめ
ロータリートランペットは、一般的なピストントランペットとは異なる構造を持つ楽器で、特にドイツやオーストリアのオーケストラで広く使用されています。
運指はピストントランペットと同じですが、ロータリーバルブという独特の機構が搭載されており、音の高さを調整します。
また、音色には微妙な違いがあり、価格もピストントランペットより高めです。
特にモーツァルトやベートーヴェン、ワーグナーといった作曲家の楽曲に適しており、見た目や構え方も特徴的です。
この楽器の理解を深めることで、トランペット全般への興味がさらに高まるでしょう。